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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)938号 判決 1949年11月10日

被告人

黄晋起

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人相沢登喜男の控訴趣意第一点について、

原審公判調書には「檢察官は本件起訴状掲記の公訴事実は次の書類及び証拠物に依りて之を立証すると述べ」て直ちに証拠の取調請求を爲した旨の記載があるのみであるから刑事訴訟法第二百九十六條に所謂檢察官の冒頭陳述が行われたかどうか不明であることは所論の通りである。然しながら原判決の挙示している証拠中、証第一乃至三号の特別製ナイフ一挺腕卷時計二個、現金百圓につきては両被告人並に弁護人は即座に取調請求に異議なしと述べ、河野宗原、村瀨日出男、深尾博正、坪井良一の各司法警察員に対する供述調書につきては両被告人並に弁護人は書類の内容を調査した上之等を証拠とすることに同意し且つその取調べの請求に異議なしと述べていることは原審第一、二回公判調書の記載により明かであつて、記録を審査するも右檢察官冒頭陳述の行われなかつた事に因り被告人の防禦に不利益を來したとか又は判決に影響を及ぼした事が明かでない。即ち本件に在つては右の違法は原判決破棄の理由とはならないのである。

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